What Is a Youth? 映画『ロミオとジュリエット』挿入歌授業に歌を What Is a Youth? 映画『ロミオとジュリエット』挿入歌 ♪ Bruno Filippini●授業の中で真善美を求める 3年生のホームルームの年間目標として「真善美を求める」「平和への願いを心に抱く」を今年は掲げ、英語の授業でも真善美を意識した教材を使っている。今回取りあげる映画『ロミオとジュリエット』の主演オリビア・ハッセーの類い稀なる美しさ、挿入歌のメロディの美しさは世代を超えて生徒の心を動かすと確信している。そして本当の美や真実を知らしめることが平和を護りたいという思いを人々の心の奥底に構築することになると信じ、日々の教室をその礎[いしずえ]としたい。 ●『ロミオとジュリエット』挿入歌 1968年フランコ・ゼフィレッリ監督、英伊合作映画『ロミオとジュリエット』(Romeo and Juliet)の劇中でイタリア人歌手Bruno Filippiniが演じるLeonardという青年が歌うのがWhat Is a Youth?(若者って何?)である。イタリアの作曲家ニーノ・ロータ(Nino Rota)による美しいメロディが心を捉える。歌詞の内容は以下: 若者とは何? 衝動的な火 乙女とは何? 氷と情熱 世界は揺れ動く 薔薇は花開き、そして色あせる 若者もそうなる 麗しい乙女もそうなる ひとつの甘い微笑みがしばらくの間、時宜を得る その時、恋が私に恋をする ある者たちは結局結婚するものと考える またある者たちはじらして、手間取る 私のはまさに最も良い「はぐらかし」。 キューピッドが私たちを支配する 悪ふざけしろ、その歌を私に歌え 死がまもなく訪れて、私たちを黙らせる 蜜より甘く、胆汁のように苦い 愛は味気なくなることがない暇つぶしだ。 薔薇は花開き、そして色あせる。 若者もそうなる 麗しい乙女もそうなる ●授業での扱う映画の場面 ①23:00-38:50(16分) 仮面舞踏会 出会いのシーンでオリビア・ハッセーが踊りながら首をかしげて伏し目から彼を見上げるときの表情をお見逃し無く! 美しい! 2人が鈴をつけながら踊るダンスが異国情緒に溢れて魅惑的である。挿入歌が流れる中で人目を忍んでのキス。ここでも首をかしげてカーテンから出てくる姿が美しい。フランコ・ゼフィレッリ監督の美的センスがこのシーンに強く出ていると思う。そしてお互いの出自を知った衝撃で場面は終わる。この16分だけでも生徒に観てもらいたい。「続きが観たい」という生徒の感想が多く寄せられ、手応えを感じた。 ②40:00-47:00(7分) バルコニーのシーン ロミオを思い、一人語りするジュリエット。ロミオのことで心も一杯だと思うが物理的にも「胸一杯」で圧倒される。高校生には刺激的だったかも。 ③1:35:00-1:37:20(2分半) ベッドシーン 二人で共有した歓びの余韻のなかでジュリエットがベッドから去ろうとするロミオに向かって呼びかけるシーンも坪内逍遙の名訳(青空文庫で公開)ではこうなる。 「去[いな]うとや? 夜はまだ明きゃせぬのに。怖はがってござるお前の耳に聞きこえたは雲雀[ひばり]ではなうてナイチンゲールであったもの。」(Wilt thou be gone? it is not yet near day: It was the nightingale, and not the lark, That pierced the fearful hollow of thine ear;) 後朝(きぬぎぬ)を遅らせ、ロミオを引き留めたいジュリエットの女心、そして演じるオリビア・ハッセーの美しい肢体。英語の授業で扱う勇気はまだ私にはない(ハードルが高いのでまずは先生方にお伝えします)。性教育の授業をする機会があったとしたらこの美しいシーンを使いたい。 ●50分授業の流れ パワーポイントを使用した授業をしている。 1)テーマは「無常」:「祇園精舎の鐘の声~ひとへに風の前の塵に同じ」まで音読し、復唱してもらう。「これは何の物語の冒頭でしょう?」と問いかける。平家物語の冒頭であり、沙羅双樹の花の色に喩えられるような無常がテーマであるがこれは日本に限ったことではなく、今日扱う『ロミオとジュリエット』の挿入歌でも同じく「薔薇は花開き、そして色あせる」と描かれていると指摘する。 2)古典と教養についてコメントする:「ヨーロッパではギリシャ・ローマの古典が重んじられました。イギリスを含む英語圏ではシェークスピアの作品のセリフを引用することがよく行われています。引用することによって、格調があると思ってもらえるという効果があります。しかしながら、教養というのは知識をひけらかすためにあるのではありません。古典作品の中にある人生の真実(truth)、教訓(lesson)をつかんでほしいと思います。」 3)シェークスピアについて:肖像画を提示して、Do you know this man? と問う。 He’s Shakespeare, an English poet, playwright and actor.(彼はシェイクスピア、イギリスの詩人、脚本家、俳優です。) 4)あらすじ紹介:14世紀のイタリアのヴェローナが舞台。モンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットが愛し合うが両家が敵対していたために悲劇が起こる。 5)登場人物紹介:写真にキャプションをつける。 Juliet, the only daughter of Capulet. Romeo, the son of Montague. 6)名セリフを2つ紹介: O Romeo, Romeo! Wherefore art thou Romeo? ロミオ、ロミオ、なぜにあなたはロミオなの? What’s in a name? that which we call a rose by any other name would smell as sweet. 何が名前の中にあるの? 私たちがバラと呼ぶものは 他のどの名前でも甘く香るでしょうに。 7)シェークスピアの四大悲劇を語る:シェークスピアの四大悲劇(ハムレット、マクベス、リア王、オセロ)につなげ、古典がテーマとする真実を伝えたい。 ・『ハムレット』:ハムレットの有名な台詞、To be or not to be, that is the question.「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」の和訳比べ。「世に在る、世に在らぬ、それが疑問ぢゃ」(坪内逍遥訳)、「生か、死か、それが疑問だ」(福田恆存訳)、「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」(小田島雄志訳)、「生きてとどまるか、消えてなくなるか、それが問題だ」(松岡和子訳) ・『オセロ』:私は四大悲劇では『オセロ』が好きで主人公のオセロへの深い同情を禁じ得ない。オセロが嫉妬という緑の目をした怪物(the green-eyed monster)に取り憑かれ、愛する妻デズデモーナを刃にかけた後でイアーゴーの陥穽にはめられたと知り、アラビアの木が薬効のある樹液を流すような勢いで悔悟の涙を落とし(drop tears as fast as the Arabian trees their medicinal gum)自らも命を絶ったのは何故だったのかをオセロに成り代わって伝えずにはおられないのである。 何故オセロは妻が浮気していると思い込んでしまったのか…、それは「デズデモーナはオセロと結婚するために父を欺いた、そんなデズデモーナが夫のオセロを欺かないはずはない」という「If..., then....(~なら、~ということ)」という論理のワナにはめられたのだった。「If..., then....の罠を抜けるには「風が吹けば桶屋が儲かる」のようにその条件が成立する度合いに疑義を挟むしかない。かわいそうなオセロ。イアーゴー恐るべし。 ※注意:あらすじ紹介というのは百害あって一利無しになりかねない乱暴な行為である。「知った気になってしまう」から。単なる紹介に終わらせないためにも何かしらの思いをを込めて生徒に語れるかどうか、教員の在りようが問われている。 ※参考:マサチューセッツ工科大のサイトではシェークスピアの戯曲が無料で読める http://shakespeare.mit.edu/ ●余談:京都の休日 11月下旬に京都支部Yさんの古稀のお祝いを兼ねたゴスペルのライブが京都・三条であったので寄せていただいた。ライブの最後に「リパブリック賛歌」(ゴンベさんの赤ちゃんが風邪引いたやヨドバシカメラの曲)の紹介があり、過激な奴隷解放運動家のジョン・ブラウンと関わりの深い曲だという歴史を教えていただいた後で参加者全員でHis truth is marching on.(彼の真実は進み続ける)と歌ったがまさに歌によってhis truthが今も生き続けているのだと感じた。これからも真善美を伝えていきたい。 |